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セミナー開催の趣旨

 統計学の活用分野は、統計調査、マーケティング、経済予測、計量ファイナンス、品質管理、企業経営システム、保険・年金、情報処理システム、環境問題、生命科学、医薬品開発、人口問題、選挙予測等と多岐にわたっています。それぞれの分野のいろいろな場面で統計データ分析が行われています。私達が実際にデータ分析を行う際には、幾つかある解析法の中から、適切な方法論を選ぶ事になります。どの分析法が適切であるかは、統計学の知識と、当該分野におけるデータ分析の経験が必要になります。また、コンピューターから出てきた数値結果はどのような意味を持っているのか、高い信頼をおいてよいか否かの判断が求められます。

 しかしながら残念なことに、日本の大学においては、統計学および統計データ分析の教育は、ごく一部の例外をのぞいては極めて貧弱であると言わざるを得ない状況です。例えば、米国、カナダでは60年ほど前に大学に統計学科ができ、1980年代には、100以上の大学の統計学科で、統計学の専門教育が行われています。またどの分野を専攻しても、統計データ分析の教育は必須で、勉強をすることになります。お隣の韓国や中国ですら、この25年間に50程の大学に統計学科ができました。日本では、一つとして統計学科が大学にありませんから、実際に企業の中や大学の研究の場で統計データ分析を行わざるを得ない場面に直面したときに、相談する人もなく、困ってしまうという話をよく聞きます。大学における統計学の教育が貧弱であるということは、企業及び社会で活躍している多くの方々が適切な教育を受ける機会がなかったことを意味します。記述統計学は紀元前3000年から、推測統計学は110年近い歴史のある、深みのある学問であり、また考え方の難しい学問ですから、自分で勉強するのは容易ではありません。

 統計データ分析で出てくる方法論の理論的な証明には高度の数学を使います。分析法を活用する方々にとっては、どのような場面で当該分析が使えるか、データから計算した数値結果は信頼できるか(同じ条件で他の方が行っても同様の結果を得られるか、結果の安定性)、どのぐらいのデータ数が必要か、方法論で要求される前提条件はどのぐらいの崩れまで許容されるか、欠測値をどのように処理するか、・・・などが重要で、数学の部分は我々のような数理統計学の専門家に任せてよいと思います。方法論の理論的な証明の部分まで理解しようと考えると少なくとも数年はかかります。このような考えから、統計科学研究所の公開講座では、数学的な部分は脇に置いて、統計データ分析を活用する方にとって本質的に重要な部分を強調して教えます。近年パソコンの性能が飛躍的に良くなり、また統計データ分析ソフトが充実し、誰でもデータから数値結果を打ち出すことができます。ここで数値結果の中に出てくる統計数値の意味を理解していることが重要になります。例えば「寄与率」という数値が打ち出されますが、使われる場面で、意味がまったく異なります。あるレベルに行くまでは、時間をかけて学んでいただくことが必要になります。トロント大学のProf.Ian Kacking によれば、1900年以降における20の発見として、相対性理論、核分裂、電子計算機、DNAなどの一つに推測統計学(何が真実で、何が偶然によるものかを論ずる学問)を上げています。最近よく取り上げられているビッグデータ、人工知能も、統計学の知識抜きでは考えられません。

 日本の大学における統計教育の現状を憂い、何とかしたいという思いで、企業の中や大学の研究の場で、生きた統計データ分析を必要としている方々を対象に、統計科学研究所として、短期の公開講座(統計セミナー)を開設することに致しました。講師は、30年以上の経験のある、学問的にも大きな成果を上げて来られ、また統計学の教育者としても高く評価されている超一流の方々にお願いすることに致しました。更に、新進気鋭の若い方にも演習等で協力していただきます。

 この講座が、日本の大学における貧弱な統計教育を補い、企業及び社会における統計学とデータ分析の水準向上に些かでも役立てば幸いです。そのために努力いたしますので、どうぞ宜しくお願い申し上げます。
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