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医学・看護学・薬学のための統計データ分析入門
講師 中村 剛先生
医学、看護学、薬学は扱うデータは違っていても、介入による生体への効果をデータにより確認するという点では一致していると思います。本講座では特に介入の程度と生体の反応の程度、統計学の言葉で言えば量反応(dose response)関係を求めるための解析法と解析結果の解釈、並びに、論文に記載する際の正確な表現を学ぶことを目的とします。
量反応関係を表現する式は統計モデルと呼ばれます。普通のモデルと違い、結果の不確実性を表現するために確率変数を用います。そのため、確率に苦手意識のある方は良く分からないと思うでしょうが、初歩的な説明だけで親しみが湧き、習うより慣れろで、正しい理解を得ることを実感し、実は世の中の殆どの出来事に確率が関与していることに気づくでしょう。
統計モデル Y=α+ε は何を示しているのでしょうか? Yはある人のある時に測定された血圧、α (アルファ) は一日の平均血圧、ε (イプシロン) は日内変動を示す確率変数とも解釈できます。ギリシャ文字αとεはそれらが観察できない未知の値であることを示しています。
Y=α+βX+εはどうでしょう。Xは観察される量であることを、β (ベータ) は未知であることを示します。
例えば、Xは飲酒量、βは血圧に与える効果と解釈できます。βXは効果が飲酒量に比例することを示していますので、このモデルはほどほどの飲酒量の場合に適合したとしても、適量を超えたときは少し複雑にする必要があるでしょう。そういった判断もしながらデータによく適合するモデルを求めるのが量反応解析です。
実践で良く用いられる、t 検定、ロジスティックモデルを主に扱います。統計モデルに付随する有意差、有意水準、P値の意味も具体例を用いて会話をしながら解説します。
研究目的を決めたら次に来るのは、データの収集です。データ収集法には2通りあります。前向き法と後ろ向き法です。それぞれに結果の解釈をスッキリさせるための作法(留意点)があります。作法に則った研究をデザインするための工夫を具体例に沿って解説します。
●データに基づく因果関係とは 1時間
定義と解釈、
調査法実例
●伝家の宝刀無作為化の正体 1時間
見えない要因、事実と真実、確率の大小、
●t検定と有意差 1時間30分
仮説検証のための実験計画の立て方
有意差による原因の特定
t分布は小標本理論の幕開け
シミュレーションによるt分布の特性
t検定が分かれば統計学が分かる
●デザインの重要性 1時間
前向き法と後ろ向き法の作法
対のデータの特殊性
ロジスティックモデルの使用法
●多変量モデルの意義 1時間
線形回帰モデル
交絡要因の影響除去の為のモデル、
ロジスティックモデルの発見
ロジスティックモデルの使用法
●まとめと質疑応答 30分
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