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因果関係の分類・定義・実例
授業時間 6時間

    講 師 杉山高一先生 中村剛先生
 相関関係は、2変数間の関連の尺度としていろいろなところに出てきます。皆さん、よくご存知かと思いますが、因果関係は漠然としているのではないでしょうか。日本の統計学の本で、それをタイトルとした本はありません。世界の統計学会でも・・・。
 今回は、この難しいテーマをタイトルとして、統計学会の秀才として知られている中村剛教授に話をしていただきます。一応、以下のような流れで、考えました。参加者は、そこから外れた質問でも良いのですが、話を聞いて討議に参加いただければと思います(杉山高一)。
(1) 因果関係の分類
  ・原因は目的により異なる:治療法と予防対策は異なる
  ・局所的因果関係vs大局的因果関係
  ・観察(例:ワインの効果)vs介入(例:治療の効果)
(2)因果関係の定義
  ・相対危険度:原因と結果の関連の数量化
  ・因果推論図:リスク対策の効果検証の道具
(3)因果関係の実例
  ・実例:見えない原因の究明法
  ・実例:仮釈放の請願に対する判決
  ・実例:喫煙は肺がんの原因?  など・・・。

 以下は、中村先生の説明です。
<因果関係の定義>
 広辞苑第6版:「原因とそれによって生じる結果との関係」
 デジタル大辞泉:「二つ以上のものの間に原因と結果の関係があること」
 世界大百科事典:「事象Aが事象Bをひき起こすとき,AをBの原因,BをAの結果という。」
 以上、いずれも明確な定義を逃げている感じ?

学生の考え:
原因と結果の関係はよく分からない。ある結果について、その原因らしきものを結果に結びつけたい時、原因と結果の関係が離れていると未知数が多くなる。因果関係の証明では、その未知数が数的なものではない可能性もあるので、大変難しいはずである。
学部生の時は「原因→結果」とすぐに結びつけていたが、検査センターで実際にデータを扱い、様々な原因が互いに作用しあって、時には思いもよらなかった原因も作用して、ある結果に到るということを学びました。因果関係について考える時には、知識だけではなく、経験も必要だととても思います。
はっきりした因果関係もあるが、原因がはっきりしないこともある。例えば、前日の雨で濡れて翌日風邪を引いた時、濡れたことは100%といえなくても原因になる。しかし、肺ガンの場合、原因はいろいろ考えられる。喫煙、生活習慣、生活環境や家族遺伝も考えられるため喫煙が原因と判断するのは難しい。
日本の子どもの学力低下の原因は家庭教育、学校教育、ゲーム等の増加?日本の子どもの学力低下は事実である。また家庭教育、学校教育、社会の変化も事実である。この2つの事実を結びつけるには、様々なデータ等が必要になってくるし、どのように結びつけるのかということも問題。
温暖化の原因がCO2とは証明されていないと講義で聞きそう理解しそう話していた。今思うと、とても恥ずかしい。CO2が温暖化に影響しているという事実は沢山あるのに、私のような専門的知識がない者が何を偉そうに言うんだという感じだ。
原因ー結果の関係が明らかと思えるものでも、考えれば考えるほど、間に外部から様々な要素や条件が入ってくる。(絶対的な結果は数学や物理以外ではあり得ないのだろうか…)
「原因」と「結果」といえばとても単純な関係に聞こえるけれど、実際はとても複雑に感じる。まず、この「結果」の「原因」はこれである、という正しい答えを誰が知っているだろうか。私達が考えている答えは自分が、そう感じているだけではないだろうか。だから、私達には、本当に正しい答え(原因)が分からないので、色々と推測して、それを「原因」と呼んでいるだけのように感じる。

学生による「AがBの原因」の定義と例
Aが起きるから、Bが起きる。例:学校を勝手に休んだので、授業内容が分からない。
Aの発生がBの発生に影響を与える時。例:飲み過ぎと寝不足が二日酔いの原因。
★Aが起きた為にBが起こるべくして起きた時。例:水俣病になったのは水銀を含んだ魚を食べたから。
Aが起こるとBが発生し、Aが起こらなければ、Bは発生しない。例:ご飯を食べないと、腹が減る。
AがBの変化の要因のとき。例:裕福な家庭の人間ほどボランティア精神がある。
Bが起こる事にAが関与しているとき。例:タバコを吸う事によって肺ガンが起こる。

 今回は「因果関係」の定義をし、実例に沿って考え、理解を深め、日常生活で誤った思い込みをしないための効果的な対策を考えます。